2025.01.29

愛犬が人をケガさせた!発生するリスクと対処法

どれだけしっかりしつけられた子でも、犬は人を噛んでしまうことがあります。飼い主さんはびっくりしてしまうかもしれません。しかしここでしっかりとした対応ができないと、大きなトラブルに発展する場合もあります。

本記事では、愛犬が人をケガさせた時に発生するリスクと対処の流れを解説します。万が一の備えに役立つ内容も触れるので、ぜひご覧ください。

愛犬が人にケガをさせた場合に発生する責任


愛犬が人にケガをさせた場合、状況により以下ふたつの責任が発生します。対策の前に、愛犬が人に危害を加えるとどんなことが起きるのかを確認しておきましょう。

刑事責任

愛犬が人を噛んでしまった場合、その責任は飼い主が負わなくてはなりません。その中には刑事責任も含まれます。

罪状 適用される要件 適用されるケース 量刑
傷害罪
  • ・人の身体を傷害すること
  • ・傷害の故意(ワザと)があること
  • ・行為と傷害の結果に因果関係があること
飼い主が愛犬を人にけしかけた 15年以下の懲役

または50万円以下の罰金

重過失致傷罪
  • ・人の身体を傷害すること
  • ・重大な過失があること
  • ・重大な過失と傷害の結果に因果関係があること
犬のケージやリードが壊れていたのにもかかわらず、
修理・交換せずにいた結果、犬が脱走して人にケガを負わせた
5年以下の懲役
または禁錮
または100万円以下の罰金
過失致傷罪
  • ・人の身体を傷害すること
  • ・過失があること
  • ・過失と傷害の結果に因果関係があること
リードをしっかり持っていたが振り払われてしまい、脱走した犬が人にケガを負わせてしまった 30万円以下の罰金
または科料

図の通り、ケースごとに該当する罪状が異なります。罪状や量刑だけでなく、適応される条件やケースも覚えておきましょう。

民事責任

次に民事責任ですが、こちらもペットの飼い主が賠償しなくてはなりません。民法718条では、以下のように規定されています。

(動物の占有者等の責任)
第七百十八条 動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、動物の種類及び性質に従い相当の注意をもってその管理をしたときは、この限りでない。
2 占有者に代わって動物を管理する者も、前項の責任を負う。

引用元:民法(明治二十九年法律第八十九号)

規定上、飼い主は注意義務違反や管理義務違反がある場合、損害賠償責任を負わなくてはなりません。なお、注意や管理上問題がないと認められた場合は別です。これは本来の飼い主に代わってお世話をしている場合も該当します。

愛犬が人を傷付けてしまった時にすべき対処の流れ


では、愛犬が人を傷付けてしまった時はどうすればいいのでしょうか。次は、正しい対処とその流れを解説します。

被害軽減のための対処を行う

まずはこれ以上周りの人が被害を受けないようにする必要があります。犬を人などから離して、ケガをした方に応急処置を施し、誠心誠意謝罪しましょう。また、必ず治療を受けることを伝えてください。

自治体ごとの条例に従って事故を報告する

犬が人を噛んで傷付ける事故は「咬傷(こうしょう)事故」といい、飼い主は24時間以内に自治体ごとの条例に従って事故を報告しなくてはなりません。報告先もそれぞれ異なります。

万が一の事態に慌てず対応するためにも、自分と愛犬がいる地域の手続きをあらかじめ覚えておきましょう。

48時間以内に獣医師の診察を受けて検診証明書を発行する

咬傷事故を起こした犬は48時間以内に獣医師の検診を受けて狂犬病に感染していないことを証明してもらわなくてはなりません。このときに「検診証明書」を書いてもらいます。これは自治体に報告するときに必要になるため、必ず用意しましょう。

なお、この報告や書類提出を無視すると、拘留や罰金などの刑を受ける恐れがあります。必ずルールに従って行動しましょう。

ペットや被害者が加入している保険を確認する

咬傷事故が発生すると、被害を受けた方の治療費などを支払わなくてはなりません。これらの支払いには、保険が活用できる可能性があります。自分や被害を受けた方が加入している保険を教えてもらいましょう。支払いの際に使える可能性があるのが、以下の保険です。

  • ペット賠償責任保険またはその特約付きのペット保険
  • 健康保険(治療費など)
  • 労災保険(被害を受けた方が通勤・勤務中の場合)
  • 個人賠償責任保険
  • 賠償責任特約付き傷害保険

なお、保険の補償範囲や保険金の支払事由は保険商品ごとに異なります。まずは自分の加入している損害保険を扱っている会社などに連絡しましょう。事故が発生した旨を話し、保険会社の指示に従って行動してください。

ちなみに、保険によっては弁護士特約が付帯しているものがあります。これは、相手との交渉が必要な時に、保険会社が雇っている弁護士が話し合いや手続きをサポートしてくれる特約です。もし加入している保険に付帯しているなら、使ってみるのもいいでしょう。

保険会社や健康保険組合などの保険者によっては、連絡する前に示談や和解が成立していると保険が使えない場合があります。保険に関わる連絡は、必ず話し合いをする前にしてください。

和解に向けて話し合いをする

保険会社への連絡が終わったら、和解に向けて話し合いをします。治療費や慰謝料など、ケガをしたことによって相手に発生した費用の取り決めなどを行います。

話し合い、示談や和解が成立したら内容の食い違いを防ぐために「和解書」を作成しておくと、より安心です。

なお、まれに話し合いがこじれてしまうこともあります。そのような場合は弁護士などの専門家の力を借りましょう。

再発防止策を講じる

愛犬が人を傷つけるような事故は、当然ですが二度と起こしてはなりません。事故の原因を把握し、再発防止策を講じましょう。

具体的には、ケージやリードなどが原因の場合は、新しい物への買い替えを行い、犬のしつけに問題がある場合はしつけ教室に通うなどがあげられます。

まとめ

どんなにしっかりしつけをしていても、犬は人を噛んでしまうことがあります。事故を防ぐには、飼い主がきちんと周囲に気を配らなくてはなりません。また、万が一の時に備え、保険の加入や咬傷事故発生時の流れをおさえるなどの対策もしておきましょう。

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